今こそ「庭」の原点に(その1)  | 株式会社 豊造園代表のコラム

今こそ「庭」の原点に
(その1)

株式会社豊造園
代表取締役 小野天下

1.はじめに

「庭」というと日本人の多くは、「日本庭園」を思い浮かべます。

学術者の多くは、日本庭園か公共空間を研究し、生涯携わる個の庭についての研究がほとんどなされていないように見受けられます。

今後、わたしたちが、「庭」とどう向き合うかについて論じてみたいとおもいます。

2.現状

お庭のイメージ

1975年ごろの一戸建て住宅は、ほとんどが木造瓦葺き、敷地面積は50~60坪で生け垣をめぐらし、門柱か門塀に門扉がついて、門から玄関までのアプローチがありました。

他は灯篭や庭石、手水鉢等が据えてあり庭木が植わっている日本庭園に近い庭が一般的で、車庫は1台分あるかないかといったところです。

お庭のイメージ

そのうち、一戸建ての住宅に座敷と応接間があり、庭を和風と洋風と半分ずつ作るようになりました。

いまでは、木造の和風建築が少なくなり、プレハブや木造風の和風ではない家が増えてきました。床の間、座敷がなくなり畳も消えました。

同時に車庫が1台から数台へと増え、庭のスペースが追いやられています。

お庭のイメージ

高さ2メートルぐらいの木を2~3本植えてあとは防草シートや人工芝を張っているケースも見られます。

法律も、建物の方は、建築基準法で国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低基準を定めています。

しかし、庭に関しては、風致地区には規制があるものの、個人住宅には、最低基準がほとんどありません。

3.庭の付加価値

自然に近い環境で遊ぶ機会がなく、電子メディアからの刺激過剰と運動不足、そしてアレルギー症の子供が増えています。

また、大人もストレス社会の中で、うつ病などの精神疾患を患う人が増加しています。

そこで期待されるのが「自然」です。

幼少期は、自然の中で遊ぶことで五感を育み、動植物など他への関心、運動神経を発達させるなどし、発見、気づき、探索という行動をとります。

また、セラピー効果も証明されています。

私たちにとって一番身近な自然は、「庭」であり、私たちの生活に「庭」は欠かせないものです。

4.理想的な庭

お庭のイメージ

私たちが推奨する「生活提案の庭づくり」があります。

それは、生活環境、ライフスタイルを踏まえ環境を調査し、最適なデザインを検討した庭づくりです。

それは、四季を楽しむ、自然エネルギー(風や光、雨)を活用する、自然素材の有効活用(石、木材、植物)など環境に配慮し、住む人はもちろん、近隣の人や通る人にも配慮した庭となります。

最近、野菜の高騰を受け、家庭菜園をする人が増えてきているようです。自給自足ですね。

当たり前ですが、植物は、酸素を生成します。

私たち人間は、植物が作り出した酸素を吸って生きています。

最近の緑化離れをみると、酸素も自給自足という考え方も必要ではないかと思えてきます。

5.最後に

以上のことを踏まえ、住宅地における20%の緑化率の義務化を進めるべきではないかと強く思います。

防災の観点からみても有効な提案ではないかと考えています。

造園業衰退と言われる時代ですが、本当に必要なものを扱う我々造園業者は、今こそ警鐘を鳴らさなければいけないと考えています。

日本造園学会 中部支部2018年より